記録的な大雪の後始末、皆さま本当にご苦労様でした。
なんとかグランドも目途がつきそうですね!
3月2日は開幕式、いよいよ勝負の時がやってきます。
今回は「イメトレの勧め」の時に少しご紹介したフロー、ゾーンについてのお話し。
フローとか、ゾーンというのは、非常に高いレベルで集中した状態のことを言います。
充実感にあふれ、目の前の事にリラックスした状態で没頭する。
多くの場合、時間感覚が歪み、スローモーションの世界になり、疲労も感じにくくなる。
その結果、自らの能力を最大限発揮し、驚くようなパフォーマンスを示す。
野球の世界で言うと、
打撃の神様、川上哲治氏の「ボールの縫い目が見えた!」
なんていうのが典型例です。

バスケのマイケルジョーダンや、ゴルフのタイガーウッズなども
このフロー、ゾーンをコントロールしていたと言われています。

このような特別な集中状態というのは、いわゆる超人達のものであって、
一般の人間ではなかなかコントロールできるようなものではないとされていました。
しかし、近年では訓練次第である程度作り出すことも可能と言われています。
「フロー」という考え方はアメリカの心理学者、
ミハイ・チクセントミハイによって1970年代に提唱されたものです。
物事に集中する中で幸福感を感じる状態を定義していて、
特にスポーツの世界ではより高いレベルでこのフロー状態になることを、
「ゾーン」「ゾーンに入る」なんて言うことが多いようです。
高度に集中することによって、最大限の能力を引き出すという考え方ですが、
これは言ってみれば、古くからある「禅」などの世界にも通じるものですね。
さて、では、この「フロー」「ゾーン」と呼ばれる状態をどう作るのか?
どのようなトレーニングが有効なのでしょうか?
まず、そもそも「集中する」とはどういう状態なのか?
スポーツドクターで、日本におけるゾーン研究の第一人者でもある
辻秀一先生の言葉を借りれば、
「集中とは人からやらされている状態でなく、楽しさに満ち溢れた
マイナス感情の少ない挑戦に満ちた精神状態」なんだそうです。
でも、なかなかそれが難しい。
集中しようと思っても、様々な雑念が頭に浮かぶ・・・
また、緊張や思い込みなどから思ったようには集中できないことが普通です。
人間ももともと野生動物だったわけですから、
周囲の環境に絶えず気を配り、危険をできるだけ早く察知する。
そんな能力が本能的に強く残っているのだそうです。
現代人においてその能力は集中力を邪魔してしまう場合が多い。
また、様々な体験を知識として記憶する人間らしい側面も、
不必要な思い込みを作り出し集中を邪魔してしまう。
この二つのパターンが集中を妨げる2大要素だそうです。
辻先生は前者を「揺らぎ」後者を「とらわれ」と定義しています。
逆に言えば、「揺らがず」「とらわれず」という状態になれば、
自然と集中した状態になるとも言えます。
ちなみに、小さな子供は何かにすぐに没頭したり、夢中になります。
小さな子供というのは、
周囲への注意力がまだ強くなく(=揺らぎが少ない)、
また、経験(思い込み)もほとんどない(=とらわれも少ない)。
つまり、自然体のままフロー状態になりやすいというわけです。
しかし、ある程度の年齢になってくればなかなかそういうわけにはいきません。
意識してそのような状態になることの訓練が必要になります。
では、その「揺らがず」「とらわれず」の状態をどう作るのか?
前述の辻先生などの方法論では、
①やるべきことを明確に意識する
②その行動を繰り返し実践して身体に刷り込む
③「表情」「態度」「言葉」「思考」をコントロールして集中状態に誘導する。
④以上の行動を自らの決定事項とし実践する。
※「言い訳」はフロー化の妨げになるため徹底的に排除する。
言い訳は自分の心の状態を「環境」や「他人」のせいにすることであり、
集中できる状況も自分以外の外部環境に委ねてしまうということ。
つまり「集中する」という行為の天敵なんだそうですよ。
ちなみに、言い訳をしないとっておきの方法を一つ、
どんな状況、結果においても、
「だからこそできること」というフレーズを付けて問題に向き合う。
「大事なところでエラーをしてしまった」→「だからこそできること」
「試合でボロ負けしてしまった」→「だからこそできること」
「ケガをしてしまった」→「だからこそできること」
「好きな女の子にふられちゃった」→「だからこそできること」
武田双雲さん、乙武洋匡さんお二人の対談から生まれた言葉だそうですが、
これなかなか使えます。
言い訳をしない=集中できる自分の下地作りに最適のフレーズだと思います。
以上がまずはベースになるようです。
野球の世界で言えば、
日々、目的意識を持ってとにかく反復練習を繰り返し、
徹底的に様々なプレー自体を身体に刷り込む。
フロー、ゾーン状態というのは、言い換えれば
外部環境の要因や経験に基づく思い込みが基になり、
不安や緊張などを引き金として生まれてしまう
余計な情報処理を可能な限り少なくし、
身体感覚に極度に集中して体が直感的に動ける状態のこと。
直観的に動く内容自体は反復練習によって刷り込まれた情報というわけですから、
その情報がもともとなければ、素晴らしいパフォーマンスも生まれようがありません。
※練習内容の定着を図る上で最も効果の高い方法は、
反復した後に、「人に教えること」だそうです。
教える過程で自分の中の情報が再整理され、
高いレベルで定着を起こすそうですよ!
さらに、不安、緊張などのかく乱要素をコントロールするために、
例えば笑顔、挨拶、ルーチン、ポジティブシンキングなどで意識的に心の状態を誘導する。
イチロー選手は毎回同じ動きをしながらバッターボックスに向かいます。

いわゆる「ルーチンワーク」と呼ばれる行為ですが、
同じ行動=ルーチンをこなすことで、不安要因などを減らせるとして、
多くのアスリートがこのような行動を取り入れています。
「ゲンを担ぐ」という行為も似た感覚と言えるかもしれません。
(単なる運頼みということでもないわけですね…)
どんな困難に当っても「笑顔」は事態を好転させるきっかけになり得ますし、
大きな声で挨拶をしているうちに、自然と力がみなぎってくるもの、
バッターボックスで深呼吸をして「よし、オレは必ずできる」と自分に言い聞かせる。
これらの行為はいずれも集中した状態を誘導するのに非常に有効なのだそうですよ。
このような行為を通じることで、誰でもフロー・ゾーンに入りやすくなるようです。
さらにより高いレベルのフロー、ゾーンに入るためには、
「考えない」ということがとても重要なスイッチになってくるそうです。
様々な場面において情報の収集、整理は必要になりますが、
その後はもう余計なことは考えてはいけないということです。
NBA、シカゴ・ブルズ、L.A.レイカースの全盛時代のコーチを務めた、
フィル・ジャクソン氏は集中して最高のプレーをするために、
「秘訣は、考えないことだ。
と言っても、馬鹿になるのではない。
とめどなく次から次へと浮かぶ考えを鎮めて、
自分の体が、頭に邪魔されることなく、
やるように訓練されてきたことを本能的にできるようにするという意味だ。」
と言っています。
ミスター巨人、長島元監督は現役時代、
「なにも考えず、来た球をズバッと打つ」などということを良く言っていました。
驚異的な集中力で数々の名シーンを演出した大スターですが、
実際には猛練習をすることでも有名でした。
ミスターはフロー・ゾーンに入る天才だったのかもしれませんね。

だいぶ長々とした話しになってしまいましたが…
フロー、ゾーン、味方につけることがもしできたなら…
可能性の領域はそれこそ無限大に広がるはずです!
ちょっと補足、
冒頭で外部環境によって揺らいでしまうというお話しをしました。
人間の動物的本能からどうしても様々なものに目が行ってしまうことが原因とも。
これは逆にうまく使えば、集中する行為につなげることもできるそうです。
自分の周囲の環境というのはどうしたところで、
様々なもの、変化、現象に満ち溢れているわけですから、
それらを実際に排除することはできないし、無視するというのも難しいことです。
問題なのは、様々な外部環境にいちいち反応してしまうということ。
そうした行為は全体の一部分だけに強くフォーカスしてしまうことであり、
実際の全体像を見誤ることになる。そのことが大きな問題になります。
「ビジョントレーニング」の時にご紹介した「周辺視」というものがありますが、
あのトレーニングをするとすぐにわかりますが、
どこか一部分に集中すると、全体の概要は非常につかみづらくなります。
バッティングでもボールを良く見ると言っても、
ボールだけをジーっとみていてもなかなかバットには当らないのではないでしょうか?
周辺視のコツは「見るともなく、全体をボーっと見ること」です。
すると、全体のなかで部分的なところにも意識が行くようになります。
バッティングでもボールを良く見るという行為は、
ボールだけでなく、ピッチャーから自分までの空間全体を認識することが大切、
なんて話しを時々伺いますが、それはまさに周辺視の感覚だと思います。
こうした周辺視の状態は「揺らがず、とらわれず、集中する」という状態に近い。
こうした感覚を養うことは、フロー・ゾーンに入るためのスイッチ、
「何も考えない」状態のためのトレーニングとしても有効なはずです。
つまり、周辺視などのビジョントレーニングを行うことは、
集中、フロー・ゾーンに入るのためのトレーニングにもなるということです。
また、イメトレは集中をコントロールする脳内のトレーニングそのものですから、
同様に大変有効な手段になるそうです。
フロー・ゾーンとは「心・技・体」を高いレベルで一致させた状態。
野球小僧の諸君にもぜひ体験してもらいたいものです!!
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一枚の葉にとらわれては木は見えん
一本の樹にとらわれては森は見えん。
どこにも心を留めず見るともなく全体を見る。
それがどうやら「見る」ということだ
~バカボンドの沢庵和尚~
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Don’t think , Feel!
(考えるな、感じろ!)
