ゴールデンエイジ考

 

ゴールデンエイジという言葉をご存じでしょうか?

野球界ではさほど耳にすることは多くないように感じますが、

サッカーなど他のスポーツでは近年非常に重要視されている

子供の成長スピードなどについての概念です。

 

子供の成長は単調で一直線な右肩上がりのラインを描くわけではなく、

さまざまな機能が特定の時期に急速に成長を遂げるような曲線を描くそうです。

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上記の図は「スキャモンの成長曲線」と呼ばれるもので、

子供の身体的機能を大別した上で、その成長曲線を示したもの。

ゴールデンエイジを説明する上で最もよく使われる研究の一つです。

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上記図表はスキャモンの成長曲線から発展して、

各年齢における身体的特徴を表したものです。

このような考え方から、児童期には技術習得を、

中学生くらいになったら、心肺機能の強化を、

高校生くらいになったら筋肉強化を、

というような考え方も定着してきているのだと思います。

 

一般的にゴールデンエイジとは、

神経系の発達がほぼ100%に到達しようとする時期と、

脳の可塑性(カソセイ、柔らかさ)がまだ強く残っている状態が

重なる期間のことを指します。

概ね10歳~12歳前後の期間がこれにあたる場合が多いのですが、

個人差もかなりあり、年齢だけで単純に判断する必要はありません。

スキャモンの成長曲線の中でも、「神経系」と「生殖器系」を見ると明らかですが、

神経系の発達がほぼ100%に近くなってから、

生殖器系の発達は一気に強くなります。

具体的に言うと、2次性徴(骨格の急激な変化、

声変わりやオ毛毛が生えてくるなど)が起きるのが

代表的な生殖器系の発達ということになりますから、

その直前の状態あたりまでがゴールデンエイジの期間になる

と考えていいのではないでしょうか。
(これも一つの参考程度のもので、他のパターンもたくさんあるとは思いますが)

 

様々なスポーツの世界でゴールデンエイジが重要視されているわけですが、

重要視される理由、ゴールデンエイジの特徴として、

①あらゆる動作・技術を習得する上で、最も効果的で効率の良い次期である。
②動作・技術習得において、いわゆる「即座の習得」という能力を示すことがある
~新しい技術を習得する上で、一般的には「学び」「理解し」「実践反復する」
というステップを踏みますが、
この時期は見たもの、イメージしたものを
一気に再現してしまうことが可能になり、
またこの時習得した技術は大人になっても
再現可能なものとして定着させることができる。
さらに、再現できる技術内容もプロが行うような
非常にハイレベルなものまで行うことができる。

などと、されています。

つまり、このゴールデンエイジの子供たちというのは、

ちょっとしたきっかけが元となり、

大きなジャンプアップをすることが起きやすいのだそうです。

 

なんだか夢のようなお話しであり、

こんな状態が作れるのであれば、

是が非でもわが子もこのゴールデンエイジの恩恵に預からせてやりたいと

思ってしまいますわな。

 

もちろん、このような特徴がすべての子供に一様に現れるわけではありませんし、

また、そもそもこのゴールデンエイジという考え方は

科学的に実証されている理論というわけでもありません。

あくまでも様々なスポーツの世界の経験則の上から

言われていることだという認識は必要だろうと思います。

 

ゴールデンエイジという考え方には、

その前段階の「プレ・ゴールデンエイジ」

後に続く「ポスト・ゴールデンエイジ」という流れが組み合わさっています。

 

プレ・ゴールデンエイジというのは、

前期段階(3歳~7歳前後)と後期段階(7~10歳前後)に分けられ、

前期は急激に神経系統が発達していく段階であるため、

この時期に様々な刺激(遊び)を取り入れることによって、

その神経系統の展開を大きくサポートできる時期。

いわゆる運動神経の良し悪しはこの時期に大きく左右されるとか。

後期は発達した神経系統が実際の動きを行うための

様々な回路として構成されていく時期で、

スポーツの個別の動きを取り入れながら基礎を作り出す時期ともいえます。

ただし、前期・後期ともに、集中力の持続は非常に限定的な段階ですので、

「飽きずに、楽しみながら行う」ということがキーワードとか。

このような環境で過ごしてくると、その後に続くゴールデンエイジにおいて、

より大きな飛躍が期待できるようになるのだそうですよ。

 

ゴールデンエイジに続く「ポスト・ゴールデンエイジ」というのは、

第二次性徴期に入り、身体が大人に向かって急速に成長を始める時期です。

急激に骨格などが成長していくことに対して、筋肉などはまだ成長途上であり、

身体バランスが大きく変わることに神経系統が

一時的に追いつかなくなったりするそうです。

いわゆる思春期という時期に入るわけで、感情的にも大きな変化がおき、

心身両面において不安定な状態となりやすくなります。

 

この時期にはゴールデンエイジ期にはなんなく行えていたことが、

突然うまくできなくなったりすることもあるそうです。
(こうした現象を「クラムジー」と言ったりもします)

この時期は、新たな技術の習得というよりも、

まずはあせらずに心肺機能などの強化(ようするにランニングなどね)や、

それまで吸収してきた技術の反復などを中心にすべき時期とのこと。

この時期の不安定さは、時間の経過とともに、

身体機能のバランスが整ってくると自然に解消される場合が多いようです。

 

ゴールデンエイジという考え方が果たしてどこまで普遍的なものであるのか?

そうした部分にはわからない点もまだまだたくさんあるように思います。

ただし、これまでの様々なスポーツの中で経験的に見つけられてきたことには、

何かしらヒントになる部分はあるようにも思えます。

 

子供の個性が一人づつ違うように、

子供の成長スピードも当然、一人ひとり個人差があります。

私たち見守る側の人間としては、

子どもたちの成長過程にはゴールデンエイジが示すような

様々な局面があるということを参考にしつつ、

気長に、長い目で見つめてあげられればな~~と思うのであります。

もちろん、それでも子供のプレーに一喜一憂してしまうことは、

保護者の習性として、致し方のないこと、

愛情と表裏一体のものだと思いつつ・・・

 

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There is always light behind the clouds.
(雲の向こうはいつだって青空)
~ルイーザ・メイ・オルコット
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